GAS aka Wolfgang Voigt

(Kompakt | DE)


ドイツはケルンを拠点とするレーベル「Kompakt」。ベルリンの「Basic Channel」とともに、現在「ミニマルテクノ」と呼ばれる音楽の基礎を作った存在。

その創設者の1人であるWolfgang Voigtは、1961年ケルン生まれのプロデューサー。青年時代に、グラムロック、ジャズ、クラシック、パンク、ニューウェイヴといった幅広い音楽と、ポップアートなど当時の新しい芸術潮流に強く影響を受けた彼は、既成概念にとらわれず、異質な要素を掛け合わせることで独自のコンテンポラリーミュージックを表現してきた。数々の名義を使い分けながら行われてきた「実験」は、1990年代までにWARPMille Plateauxraster-notonなどの名門レーベルからリリースされている。

既に電子音楽界で確固たる地位を築いていた彼が、1990年代半ば、創作への飽くなき情熱を体現すべく始動したプロジェクトが「GAS」である。

彼はその直近の活動で、テクノと同様、淡々とループを繰り返す行進曲(マーチ)を探究していた。始まりも終わりもなく、形もない、それでいて、陶酔状態を呼び起こす、まるで「気体」のような音楽を表現したい――その想いが名義に込められている。

GAS」とは、作曲家で言えばシェーンベルクとクラフトワークの中庸であり、楽器で言えばホルンとバスドラムの中庸。または、ワグナーがグラムロックを作ったようなものであり、「ヘンゼルとグレーテル」のアシッドトリップ版とも言える。終わりのない行進曲は、聴く者を霧がかった深い森の奥へと引き込んでいく。

Voigtは自身の音楽に、森など題材の音をそのままの形で使うことはしない。むしろそうした素材を分解し、元の文脈から解放された要素そのものの美しさに還元することを目指している。あらゆるテクニックを駆使して引き出されたそれは、ループという迷いの洞窟を造り出す。

彼の音楽を難解そうだと敬遠してしまう人もいるかもしれない。聴くときは難しいことは忘れて、ただ「素晴らしい音楽」に身を委ねてみてほしい。

 

http://www.kompakt.fm/artists/gas